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おおつごもり [エッセイ]

 2012年の大河ドラマは「平清盛」だそうです。
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり・・・
言うまでもなく、平家物語の書き出しの一節ですが、 2月にニュージーランドで地震が起きた際 その後日本で起きることをどれだけの人が予想できたでしょう。
ただただ、人間の無力さと世の中の無常を思い知らされた1年でした。

 

IMG_0429 (Small).JPG呉市入船山公園旧東郷邸

 長門市仙崎出身の金子みすゞ の作品の「こだまでしょうか」のCMが、東北地方太平洋沖地震に伴うCM差し替えにより多くの人の知るところとなりました。
わかりやすいフレーズが当時日本人の心に響いたと思います。
これも何かのめぐり合わせでしょうか

東北の作家といえば宮沢賢治です。
代表作の「銀河鉄道の夜」はいつまでも一緒と思っていた人との死別の物語で、以前読んだ記憶からあまりにも暗く、震災直後の状況からしてこの本を開くのは気が重かったので すが、あらためて今読み返してみると、闇の中にも今生きている人間へのメッセージが読み取れるように住人には思えます。
それは愛であり利他の精神であり、一切皆苦のこの世を希望を持って生きるということというふうに住人は理解しました。

P125
「おまえのともだちがどこかへ行ったのだろう。あのひとはね、ほんとうにこんや遠くへ行ったのだ。おまえはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」
「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐに行こうと言ったんです。」
「ああ、そうだ。みんなそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。
 おまえがあうどんなひとでも、みんななんべんもおまえといっしょにりんごをたべたり汽車に乗ったりしたのだ。
 だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい。そこでばかりおまえはほんとうにカムパネル ラといつまでもいっしょに行けるのだ。」

P128
 そのときまっくらな地平線の向こうから、青じろいのろしがまるでひるまのようにうちあげられ、汽車の中はすっかり明るくなりました。
 そしてのろしは高くそらにかかって光りつづけました。
「ああマジェランの星雲だ。さあもうきっと僕は僕のために、僕のおっかさんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ。」
 ジョバンニはくちびるをかんで、そのマジェランの星雲をのぞんで立ちました。そのいちばん幸福なそのひとのために!「さあ、切符をしっかり持っておいで、おまえはもう夢の鉄道の中でなしに、ほんとうの世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川 のなかでたった一つのほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない。」

「たった一つのほんとうのその切符」とは「いのち」であり、「きぼう」であると今の住人は解釈したのですが。

日々是好日、一期一会で、来年もなんとかかんとか歩いていきたいものです。

明日ありと思う心の仇桜
夜半に嵐の吹かぬものかは

さあ、そば食べて、元旦をまたずに今日から飲むぞー!

新編 銀河鉄道の夜
宮沢 賢治 (著)
新潮社 (1989/06)


タグ:宮沢 賢治
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