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本当は怖い! 奥歯に保険の白い歯 [歯の話]

 A子さんは  右上の小さな奥歯(小臼歯)のむし歯がしみだしたので、近くのB歯科医院を訪れました。
レントゲンを撮影して、B先生が説明するには「むし歯がひどいので、治療をした後に冠をかぶせないといけません。
  ここ(小臼歯)は保険で、プラスティックの白い歯(以下HJK)が入らないことはありませんが、歯やお口全体の健康を考えたら金属(銀色)の歯をお勧めします。
白い歯がご希望であれば、保険外の治療をお勧めします。」と説明を受けました。
A子さんは考えさせてくださいと言ってその医院を立ち去りました。

奥歯とはいえ、自分の口に銀が入るのが納得いきません。かといって歯の治療に高いお金を払う気はありません。
仲のよい友達に相談すると、「Cクリニックの先生は優しいし、保険でしてくれるよ」と教えてくれました。
早速受診して、「奥歯に保険で白い歯が入りますか?」とC先生に相談すると、
「いいですよ。保険で出来ます」と言ってくれ、Cクリニックで、治療することにしました。

結局奥歯、小臼歯2本にHJKを入れました。
セットした日に鏡で見ても、自分の歯より白いくらいのキレイな歯が入って大喜びです。

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 「やはり、C先生は親身になってくれる良い先生よ。サイコー!。それにひきかえB先生は「保険が効かない」とか言って、自費を勧めて儲けようとしたんじゃない。最低―」

数週間経過してふと気付いてみると、「そういえば最近プラスチックのところで噛みにくい」。
気がつけば左側ばかりでかんでいたのです。
あまり気にしないようにしていましたが、プラスチックがすり減り、下の歯とかみ合わず、隙間ができていたのです。色も茶色くなって、歯と歯の間も何となく物がはさまりやすいような気がします。

無意識に左側でかむので、A子さんの噛み合わせは左に少しずつずれ始めました。
あごの関節に違和感があり、肩こりが少しひどくなったような気がしましたが、あまり気にせずにいましたが、ある日、入れたHJKの奥の歯(大臼歯)が痛くて痛くて咬めなくなりました。

あわててCクリニックを受診すると、歯の根っこが化膿しているということで治療することになりました。
できるだけ早く終わって欲しいことをC先生に告げたら、「解りました。早く終わりましょうと」言ってくれました。
今度は奥歯なので、保険の金属で冠をかぶせなおすことにしました。
ところが冠をかぶせるとしばらくしたら、また痛くなりました。
冠をはずすと痛くなくなるのですが、装着すると痛くなります。

仕方なく、左側ばかりで噛んでいると、肩はこるし、今度は左が急に痛くて咬めなくなりました。
またC先生に診てもらうと、「歯が割れているので、抜かないと無理」といわれました。
なんだか、治療してもどんどん悪くなっている気がしたA子さんはだんだん心配になってきました。
まさか、HJKが原因かもしれないなんて夢にも考えていません。ただただ、歯科医に対する不審は募るばかりです。

我が家にも時々このような患者さんが 痛んで来院されます。若い女性に多いように思います。
かみ合わせに問題が無い場合、1本くらいHJKを入れても顕著に問題は出てきませんが、2~3と本数が増えると問題が出てくるようです。
健康保険のルールでは「噛む力に耐えれる場合に限り、小臼歯にもHJKは装着できる」のであってどちらかといえば例外的であり、大臼歯にはHJKは入れられません。

 絶対にこのような顛末になるわけでもありませんが、理由は以下のとおりです。
B先生は、よく勉強しているし、真面目な先生です。ただ女性には人気が無いでしょう。堅物です。
 B先生は以下のようなことを見抜いていたのです。
右上に入れているHJKはすぐに割れるかもしれない、割れないにしてもプラスチックがすり減ってしまうと、その歯は 咀嚼には参加せず、歯が無いのも同然になってしまう。
噛んでもかめないので、無意識のうちに他の歯で強くかんでしまうので、他の歯に無理が及んでしまう。
そのような噛みかたは、肩こりになるばかりでなく、他の歯の根っこが化膿しやすかったり、割れたりしやすくなる。片方ばかりで噛む癖がつくと、顔の筋肉のつき方が左右非対称になり、結果的に顔が左右非対称になってしまう・・・・これらのことは患者さんにとって不利益なので説明しておかなければ・・・・

B先生は親切に説明したかもしれませんが、結果的に受け入れてもらえなかったのです。
一方、
C先生はその理屈を理解しているかどうか解りませんが、患者さんに嫌われるはイヤだし、プラスチックの方が金属を使うより低コストで利益を生みますので、患者さんに嫌われてまで金属を入れようとは思っていなかったのかもしれません。グズグズ言わずにHJKを入れました。
 しかも、C先生の入れたHJKは 磨り減ってしまっているので、全く働いていない(噛みあっていない)ので痛みません。自分の治療が、他の歯に悪影響を及ぼしているなんて夢にも考えていないし、ワルギも罪の意識も無いかもしれません。
それに加えて、他の歯が悪くなり、治療する歯が増えているので、ドンドンがんばって治療するだけです。

 本当に健康のことを考えるのでしたら、金属の歯を入れるべきだったかもしれません。
とりあえず、HJKを入れておいて、飲み会とブランド品を買うのを少し我慢して、貯金してから自由診療の白い歯を入れるべきだったかもしれません。

ちなみにセラミックの歯はアメリカで約14万円、スイスで約10万円、フランスで約21万円だそうです。日本のセラミックの治療代は外国と比べると、安いのではないでしょうか。(それぞれの価値観ですが・・・・・)(参考文献より)

十分説明を受けて納得して、治療を受けるべきですが、HJKは応急的な仮歯くらいの位置づけのほうが良いかもしれません。何よりも「歯を削らないといけないようなむし歯を作らないこと」にコストと時間をかけるべきでしょう。

今回のこの文章で、A先生、B先生を非難するものでなく、悪くも無いと思います。

どのような治療を受けるにしても、患者さんが幸せになることを望んで止まない、山奥の住人による事実に基づいたフィクションでした。

参考文献 歯科医療再製のストラテジー&スーパービジョン 川渕孝一 編

 


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not_so_bad_one

本文を書いて8年が過ぎようとしております。
その間、新しい材料(マテリアル)による治療法が健康保険に導入されております。確かに材質の進歩は見られますが、本質は変わるものではありません。
特に論旨を変更する必要は認められません。
馬寄村の住人
by not_so_bad_one (2018-01-13 08:11) 

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