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お勧めの一冊No.10 [お勧めの1冊]

論語と算盤 (角川ソフィア文庫) (文庫)
渋沢 栄一 (著)

•文庫: 318ページ
•出版社: 角川学芸出版 (2008/10/25)
•ISBN-10: 4044090017
•ISBN-13: 978-4044090012
•発売日: 2008/10/25
•商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.6 cm

 今日の経済状態は100年に一度の危機だそうである。ということは前回の日本における危機は1920(大正9)年の第一次世界大戦後の金融恐慌だろうかそれとも明治維新であろうか。

本書は維新以来、日本に世界と比肩できる近代の実業界を育てあげた、日本実業界の父、渋沢栄一(1840~1931)が、後進の企業家を育成するために、経営哲学を語った談話録で、昭和2年初版である。

明治維新はそれ以前の日本人の知識と道徳の積み重ねがあったからこそ西洋諸国の植民地にもなることなく、成功したと住人は考える。日本人古来の倫理観などが失われつつある現在の状況はそういった意味で明治維新のときよりもさらに危機的状況ではないだろうか。

今日のそのような状況の下で、「孔子という聖人の言葉を実業家である渋沢栄一が いかに日本の実社会で消化し応用したか」を理解することは 大変意味のあることだと思う。
「道徳の欠如した利益追求は洋の東西を問わず非難されるしその成功は長続きしない。「東洋には利益の追求は悪である」とする考えもあるが、孔子はそうは言っていない。道徳に基づく、世のための仕事で利益を上げることは善であるり、論語と算盤は矛盾しない。」というのが本書の主張である。

論語と算盤

 本書の場合、道徳は企業家だけでなく、一般市民もすべて含めた総合的な道徳である。 企業家一人に責任を押し付けるのでなく、日本人全体の心のあり方を筆者は言いたいようである。

本文より
「世間には、冷酷無情にしていささかも誠意なく、その行動の常に奇矯不真面目なものが、かえって社会の信用を受け、成功の栄冠を戴きおるに、これに反して至極真面目にして誠意篤く、いわゆる忠恕の道にかなったものが、かえって世に疎んじられ落伍者となる場合がいくらもある。」
以上の理由を解説しているのだが、住人にはズバリ腑に落ちました。
本文より
「われわれも明治6年頃から、物質的文明に微力ながらも全力を注ぎ、今日では幸いにも有力な実業家を全国到る所に見るようになり、国の富も非常に増したけれども、いずくんぞ知らん、人格は維新前よりは退歩したと思う。否、退歩どころではない。消滅せぬかと心配しておるのである。ゆえに物質的文明が進んだ結果は、精神の進歩を害したと思うのである。」
渋沢栄一が現在の状況を見たらなんとコメントするだろう。現在の経営者のみならず、労働者も含めて現在の日本人に対して問題点を指摘している様に思える。
現在の閉塞観の解決の糸口が本書にはあると思われる。

  住人の記憶に間違いがなければ、破綻が危惧されるアメリカのビックスリーの経営者は「労働者の賃金を日本企業の労働者レベルまで下げたい」と言っていたようである。
ということは、ビックスリーの労働者は現地日本企業より高額の賃金を得ているということであろう。「自分がより得をしたい」といった考えで、経営陣と株主と労働者それぞれの個人主義、利益追求に走った結果が現在のアメリカではなかろうか。
 一方、個人主義の対極にある社会主義が人間社会で永続不可能であることは歴史が証明している。そして、今日のグローバル経済では 日本より安い賃金で商品を作って世界中に販売して喜ばれている途上国は数多く、それらの国から安い商品はわが国へどんどん流入する。

自国の人間、社会が再生可能な程度の利益の追求は筆者も言っているように必要であり、善である。
けれども、他の途上国の「ヒトの努力(労働)とそのヒトが得る利益」とわが国の状況を比べると、現在の日本はやや個人主義、個人的利益追求に走りすぎているように思う。途上国のヒトから「その程度の努力(労働)なら我々はもっと安い賃金でやります。」といわれたら、アメリカのように多くのヒトが職を失うことになるであろう。現在は世界的レベルで同一労働=同一賃金になりつつあるのである。
日本がアメリカのようにならないためには 日本の政治家や資本家だけに責任があるわけではなく、 日本人一人ひとりの努力と道徳性にかかっていると思うのだが、これだけ様々な詐欺、疑心がはびこっている日本に住人はやや悲観的である。今こそ明治時代までの質素、勤勉、正直、思いやり、の日本に立ち返るべきであろう。
近江商人の家訓として「買い手良し、世間良し、売り手良し」の「三方良し」がある。商人に限らず日本人は皆、過去この発想でうまくやっていた。現代においても、エゴイズムのエリアを少なくとも1個人から日本国まで広げないと日本が危うくなるような気がする。

いつもの癖で横道にそれたが、本書は講話集なので、内容が重複していたり、ややまとまりに欠けるが、重要だから繰り返し述べていると思えば、住人のような凡人にも十分理解しやすいよう噛み砕いてくれていてよい。ぜひ一般人の方にお読みいただきたい。

 


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