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副鼻腔炎と歯の関係 [歯の話]

 先日(2008年12月10日)NHKの「ためしてガッテン」で「その鼻づまりが危険! 蓄のう症予備軍1億人」という番組を放送していました。
当然のことながら副鼻腔は耳鼻科の領域なのですが、歯科の立場からコメントさせていただきます。

 副鼻腔炎は番組でも志の輔さんがおっしゃっていましたが、かなり強い痛みを伴います。
その痛みを歯の痛みと勘違いされて歯科に来院される患者さんがいらっしゃいます。
上顎(上のあごの)の真ん中から2番目3番目あたりの痛みを訴えられたり、どこか判らないがとにかく上の歯が痛いと訴えられる患者さんがいらっしゃいます。
その部分に明らかに治療の必要なむし歯などがあれば、治療を開始してもよいのですが、痛みそうな虫歯がなかったり、あるいは軽度のむし歯に対して治療したのに痛みが軽減しない場合は副鼻腔炎も疑ってみる必要があります。
 我が家でも虫歯がないのに強い痛みを訴えられた患者さんや治療しても痛みが軽減しない患者さんに耳鼻科の受診を勧めたら上顎洞(じょうがくどう;副鼻腔のひとつで上の奥歯の根の先端部分と隣り合っている)炎などの副鼻腔炎だったことが結構あります。

DSC_7210 (Small).JPG室生寺

 患者さんにしてみれば、痛みが激烈であればあるほどややパニック的に「説明はいいから、なんとかこの痛みを取り除いてほしい」と強く思われるようです。けれども「痛み」は主観的なものであり、個人差があり、どの場所がどの程度痛いかを数値化するのはなかなか難しいのです。歯が痛んでいるのか、副鼻腔が痛んでいるのかは なかなか判りにくいようです。ここでもいつも申し上げるように医療に100%はありません。

 レントゲンを撮っても「むし歯になってない」あるいは「歯の根っこが化膿していない」ような歯でも患者さんが歯の痛みと思い込んでしまい、ズバリ「この歯が痛い」と訴えられると、歯科医としては(特に優しい歯科医は)患者さんの訴える歯を治療することがあるようです。けれども治療しても痛みが取れない場合はさらに踏み込んだ歯科治療を行う前に耳鼻科などを受診してみてください。
耳鼻科を受診して何も問題ないと言われれば、その時改めて歯の治療に取り掛かってもあまり手遅れになることはないと思います。「歯が化膿しているという診断」のもと抗生物質を飲んだら、タマタマ副鼻腔炎のほうにも効いて症状が軽快することもあります。このような場合本来の原因である副鼻腔炎に気づかないままになったしまう恐れがあります。

 先日、お痛みの若い女性が我が家に「アポなし」で来られました。上の前歯の真ん中から2番目、3番目辺りの歯がひどく痛いとのことでした。住人がレントゲンを撮ってみると確かにその部分にむし歯がありましたが、少し気になることがありました。痛んでいるとおっしゃっている歯の周囲の歯がそれほどひどいむし歯だったようには思えないのに、以前かかっていた歯医者さんは歯の神経を取って治療していたのです。
「神経を取らないといけないほどひどいむし歯ではなかったようだがなー」と疑問に思いながらも、新しくできたむし歯の治療を1本だけ行い、痛みが取れなければ連絡するようお伝えしてその日は終わりました。
想像通り次の日の土曜日に「痛みが取れない」と連絡が入りました。ここで住人はほぼ確信したのですが、すぐに来院してもらい、残りのもう1本の虫歯の治療をしましたが、ご本人にこれで痛みがおさまらないようなら神経を取ったり踏み込んだ歯科治療をする前に耳鼻科を受診するようお伝えして、翌週に念のため我が家のアポイントを取っていただきました。
 案の定、翌週に来院された時にその後の状況をうかがうと、「土曜日に我が家で治療したあとも痛みが取れないので、休日急患センターで耳鼻科を受診したところ、副鼻腔に炎症があるようなのでお薬を出していただき、それを飲んだら、痛みが取れた。」とのことでした。
やはり住人の予想が当たったのです。仏心をだして、何とかしてあげようと思い歯の神経を取ったりしなくて本当によかったと思いました。確証はありませんが、ひょっとすると以前にも副鼻腔の痛みを歯の痛みと勘違いされたのかもしれません。

 一方、むし歯が原因で上顎洞炎になることもあります。先ほど述べたように上顎洞は上の奥歯のすぐ上にある副鼻腔です。(場合によっては歯の根っこが上顎洞という、「ほらあな」の床の部分から突き出ていることもよくあるのです。)
上の奥歯のむし歯を治療せずに放置していた場合などに歯の根っこの先が化膿し、その炎症が上顎洞まで及んで、上顎洞炎になることもあります。場合このような場合は、しっかり歯科治療を行わないと治りませんし、耳鼻科と歯科が連携して治療を進める必要があることもあります。 上あごの痛みがひどいときは最初はどちらの先生でもかまいませんが、状態を詳しく説明しましょう。歯科においては副鼻腔炎と歯の関係を診断、区別する上でも鮮明なX線写真の撮影が必要です。そして状況があまり変わらなければ、複数の診療科による総合的な診断をしてもらう必要があると思います。


まじめな歯医者さんと「歯の根っこの治療」。>>> http://onoki.blog.so-net.ne.jp/2008-05-16

 

 

室生寺


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コメント 2

ゆき

はじめまして
私もかつて歯の痛みだと思い込んで歯科医院へ行ったら 
歯は虫歯でもなく膿んでもいないので
医師も首を傾げてましたが しばらくして 後頭部をトントンと
叩くやいなや・・
「これは たぶん鼻の病気だろうから 耳鼻科に行ってみては?」
と勧められたので 後日 行ってみたら
やはり副鼻腔炎でした
けっこう鼻の痛みや違和感で来院されるかたも多いんですね
と ここを読んで思いました
by ゆき (2010-06-18 13:55) 

not_so_bad_one

ゆきさんへ
当ブログへお越しいただきまして、ありがとうございます。御礼申し上げます。

ゆきさんが受診した歯医者さんは良医でよかったですね。

せっかくですので追加させていただきます。(重複しますが・・・)

副鼻腔炎は副鼻腔というホラアナの粘膜が炎症を起こした場合、内圧が高まり、かなり強く痛むようで、歯の痛みと勘違いなさって、歯医を受診する方が多いようです。
歯の痛みか副鼻腔の痛みかを患者さんが区別するのは困難と思われますので、まずは耳鼻科か歯科医に相談なさるのがよいと思います。
鼻が原因の副鼻腔炎であれば当然耳鼻科で治療します。
歯が原因の副鼻腔炎であれば、先ず歯科治療を行うことになると思います。

コメントありがとうございました。

馬寄村の住人
by not_so_bad_one (2010-06-18 18:36) 

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