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お勧めの一冊No.9 [お勧めの1冊]

 仏像―心とかたち (NHKブックス 20) (単行本)
 望月信成 佐和隆研 梅原猛 (著)

 • 単行本: 225ページ
 • 出版社: 日本放送出版協会 (1965/04)
 • ISBN-13: 978-4140010204
 • 発売日: 1965/04
 • 商品の寸法: 18.2 x 13 x 1 cm

 和辻哲郎の古寺巡礼を始め仏像マニアがわがバイブルとする書籍は多くあると思う。住人が仏像に入るきっかけはすこし変わっており、いとう せいこう, みうら じゅん著の「見仏記」シリーズではまってしまった。
しかし、教科書的な入門書としてお勧めなのが本書である。

 この本はNHK放送番組、「「仏像」かたちとこころ」の再整理である。
仏像の形の背後に心を探り、その心を現代的視点で考えるという新しい着想で書かれたと「はしがき」にある。
章立ては
仏像のこころ
仏像の誕生―釈迦如来像
現世利益の仏―薬師如来像
彼岸への憧憬―阿弥陀如来像
絶対への探求―大日如来像
変化の仏―観音菩薩像
路傍の仏―地蔵菩薩像
となっている。

「仏像のこころ」では、本書の目的を
「前略・・・
一体、このような仏像ブームはどうして起こったのか。仏像ブームは果たして健康な文化の証拠であろうか。それは結局、現代という極端に機械化され、組織化され、合理化された世界から逃避し、何となく深遠で孤独な美と宗教のムードに浸ろうとする、精神の逃避ではないか。そして、ナショナリズムの風潮が盛んになるにつれ、高まりつつある仏像ブームは、結局、現代の問題から目をそらし、かつての日本の文化遺産に、ロマン的回顧にふけろうとする保守的な精神の退廃ではないか。もしも、仏像の鑑賞が過去の文化への回想のかもしだすロマン的ムードにひたることにすぎないならば、このような批判をまぬがれることは出来ないであろう。
・・・中略・・・
NHKテレビで「「仏像」かたちとこころ」という番組で試みたのは、仏像鑑賞を単なる過去の文化の回帰として終わらせまいとする試みであり、仏像の問題を、そのような仏像を作った日本文化の問題、日本人の心の問題として考え、現代への意味を考えることであった。・・・後略」とある。

出版年は1965年なので、当時すでに梅原氏の目には「仏像ブーム」なるものあったようである。しかも、前段の
「~保守的な精神の退廃ではないか。」という批判に対し、
後段の
「~日本文化の問題、日本人の心の問題として考え、現代への意味を考えることであった。」が本書の目的であったのであろう。
 つまり梅原氏の目には1965年当時すでに
「現代という極端に機械化され、組織化され、合理化された世界」と言うものが存在し、そこから逃避しようとする者たちによって「仏像ブーム」が起きているようだが、過去への逃避でなく、仏像というものを現代的に捉えたいと考えたようである。
住人が思うに「精神の退廃」と言われようと現代の日本人は過去の文化へ多少回帰したほうがよいのではないかと考えるが、そんな難しい話はさておき、

 章立てからも判るようにわれわれ凡人とって本書は
仏教が日本に伝来し、時代が下るに従ってどのように変遷があったか、過去の日本人はそのそれぞれの時代時代でどのように「仏教」と向き合い、受け止めながら仏像を拝したかが判りやすくを述べらているように思う。

そのことを
本書の帯で、京都大学名誉教授 桑原武夫教授が推薦文として
「本書は、外形のみの比較計量、科学研究と称する安易さを捨て、また、仏像の静観から生じる感動の主観的うたいあげを自制した。これは仏像を媒介とした日本精神史の新しい試みで、機能によって分類し、厳密な形態論をふまえて、なぜ、またいかに日本でまつられたかを探求するところに生態学的方法すら感じさせる興味深い研究である。」と述べておられるが、
この難解な文章を住人なりに解読すると
「学問的になりすぎず、かといって感傷的にもなりすぎず、程よいバランス感覚で、仏像を分類し、過去の日本人の考えたことに迫ろうとしている」というところだろうか。

そしてこのことが入門書としてお勧めの理由である。


 



 

タグ:仏像
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