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エントロピーと経済 [世の中のからくり]

 物質とエネルギーは使用可能なものから使用不可能なものへ、秩序化されたものから無秩序化されたものに変化し、決して逆戻りさせられない。つまり、宇宙の全ては体系と価値から始まり、絶えず混沌と荒廃に向かうことをエントロピーと言うと高校時代に化学の先生から習いました。
所得の流れも、熱エネルギーに例えれば、同じことが言えるのではないかと考えています。
今日アメリカ合衆国のサブプライムローンにより、世界的な経済問題が起こっています。一方国内においては「格差社会」と言われだして久しいが、現在の日本は格差社会なのか、歴史的に、世界的に考察してみる必要があるように思います。

DSC_7136 (Small).JPG興福寺

 山上億良の貧窮問答歌にもあるように古来日本は格差社会です。住人が思うに、江戸時代までは ほぼ日本の中での「パイ取り合戦」だったのが、現代ではグローバルな「パイ取り合戦」になりました。江戸時代から現代まで、鎖国状態から徐々に市場開放してきたのだが、日本人の給料のほうが欧米より安かったので仕事と所得が欧米から流れてきていたので、つまりパイが増えたので、そんなに問題になることはありませんでした。そういう意味では日本人は他のアジア人や欧米人に比べ「パイ取り合戦」に慣れてない民族と言えるでしょう。(住人はそんな昔ながらの日本が好きである)
 現在の日本のおかれた状況は逆転しているように思えます。
工場は生産コストが抑えられるのであれば、中国へもベトナムへも出てゆく。
中国やベトナムの人は、「日本に行った方が稼げる」となれば大量の安い労働力が日本に押し寄せてくる。
日本人のパイの取り分がどんどん減っているのです。
いまや日本人は国内の競争でなく、世界中の人間を相手に競争しないといけなくなったのです。(かわいそうなことに我が家の子供もそうなのだが、この現実に気がついていないのか、気づかないふりをして逃げているのか、「もともと特別なオンリーワン♪~」とのんきなことを言っている。)
工場の労働者だけでなく、医師だって、営業マンだって、日本人の給料よりも安くても喜んで働く外国人が現れれば、現職は危うくなります。
 例えば、野球だって相撲だって外国人枠という規制を撤廃すればもっと外国人が流入してくるでしょう。そうすれば日本人の子供たちは世界の子供たちと競わなければならないのです。
 国内戦でそこそこの成績を収めても世界大会ではわけが違う。工業だって、農業だってそうやって日本の産業は空洞化し、日本国内も外国人労働者が流入してきている。
つまり、自由と平等をグローバルで突き詰めると、外国人に職を奪われたり、給料が下がらざるを得ない日本人が出てくるのが、現在の国際社会の自然の流れであると思います。

 次に住人の業界に目を向けてみましょう。
住人は韓国や台湾などの同世代の歯科医と交流がありますが、彼らは間違いなく、日本で働きたいと思ってはいません。なぜなら、日本人の歯科医はアジア諸国の歯科医に比べて、貧しいと思われます。
国際学会などで見るアジアの歯科医の多くは非常に優秀で、(海外の国際学会に参加するくらいなので優秀なメンバーなのかもしれないが)輝いている。彼らの国ではまだ、歯科医の数が少なく、VIPを相手にしているので、所得が高く、尊敬されている。そして英語はぺらぺらだし、日本を通り越して米欧に熱いまなざしを向けているようである。外国人が日本で開業するには規制があります。仮に規制がなくても所得が低く、社会的地位の低い日本で開業しないと思われます。
 将来仮に、それぞれのアジア諸国で、歯科医が供給過剰になれば、安い給料でも働くと言う外国人歯科医が日本に現れるかもしれません。
外国人歯科衛生士が登場する日は意外と近いかもしれません。なぜなら、日本の若い人たちは衛生士にはなりたがらないようだからです。(理由は賃金が安いから?3Kだから?)

 現在の日本の医療(皆保険制度)は低コストでしかも、アメリカや他のアジア諸国に比べれば格差が少なく、比較的高レベルの医療が受けられるように思われます。
今後、医療費の削減で日本の医療が傷んで、低品質化すると、日本のVIPは海外で治療を受ける日が来るかもしれません。そして我々一般人は健康保険制度の中で、レベルの下がった医療を甘受せざるを得ない日が来るかもしれません。

 住人の見えないところで、日本国内の格差も広がっているのかもしれませんが、国民の中で格差が広がっているのでなく、「明日が今日より、よりよい日になると思える日本人が少なくなっている」だけで、江戸時代よりも、明治時代よりも、戦前よりも日本国内の格差は縮まっているのではないでしょうか。
それよりも、日本人の給料は、もっと貧しい国、もっと貧しい人がいる以上、それらに引っ張られてこれからも下がってゆくのではないでしょうか。仕事は給料の安い国に流れていくでしょう。(日本からますます仕事がなくなる可能性があります)。海外移転できない仕事も賃金の安い労働力が流入してくることにはおおむね逆らえないと思います。(皆さん少しでも安い、商品、サービスを望んでいますから)。すべて、自由経済の中での平等な競争の結果として起こりうることです。
対抗策は江戸時代に戻って鎖国するしかないかもしれません。
 今までは仕事や所得を日本人同士で奪い合っていればよかったのだが、今後外国人と奪い合わなければならないなかで、一部世界的なお金持ちの日本人も現れるかもしれませんが、総じて貧乏になってゆくような気がします。そして日本の国内格差はグローバルな視点の格差に比べれば誤差の範囲に入るのかもしれません。世界から見れば日本はある意味均質な、平等な国かもしれません。
2007年の12月27日の朝日新聞が、「内閣府が昨日発表した「06年度国民経済計算確報」で、2006年の日本の国民一人当たり名目GDPがOECD30カ国中18位で、1980年以降最低であった」と報じていたそうです。

 今後日本はどのランクにいるのでしょうか。国民一人当たりの今の所得を維持できるでしょうか。出来なければ、生活の質を落とさざるを得ません。

今日の住人の一言
「ナンバーワンにならなくてもいいけど、そこそこ幸せになるための競争からは抜けられない♪~(字余り~♪)」

貧窮問答歌>>>http://blog.hix05.com/blog/2007/02/post_111.html

現代語訳朗読>>>http://www.geocities.jp/akanehompy/reading/tsuchiyamasumi/mon/

興福寺

 


 


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