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ただいま売り出し中 [見仏]

 7月に鳥取、島根にドライブに行ったときのことである。
弓ヶ浜から境港を右に折れた島根半島の東端に美保関町がる。その先端の地蔵埼には世界歴史的灯台百選に選出された美しい美保関灯台があるのだが、その美保関港に佛谷寺というお寺がある。
 住人は「週刊 原寸大 日本の仏像(49) 三佛寺 蔵王権現と山陰、山陽の古仏」でその存在を知ったのだが、山陰のこのあたりのお寺はあまり参拝者が多くないせいか、また別の理由からか、拝観するのに予約が必要なお寺が多い。
当寺も要予約と書いてあったが、「連休だしひょっとしたら予約なしでも・・・」と甘いことを考えながら、それでも「だめもと」で美保関まで、車を走らせた。

 美保関港から程近い奥まったところにあることを地図は示している。いざ漁港に到着してみると観光客相手にイカの一夜干し?を焼いてくれるいる出店などもあったが、観光客はちらほらしか見当たらない。しかも目的地を探すのが大変だった。

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佛谷寺

 生活のにおいのする路地のようなところを迷いながら探してゆくと、住宅地の中にひっそりとうずもれて、お寺がたたずんでいた。
寺伝によれば行基を開基とする山陰第二の古刹で、その後空海が七堂伽藍を建立したが、その後兵火にかかり消失したとある。
その昔は海に面していたかもしれないが、お寺の勢いが衰えるに伴い、平地が少ないせいか、周囲から住宅が押し寄せてきたのかもしれない。少なくとも門前市をなした形跡は現在では皆無である。

門の中をのぞくが、住職が住まわれていると思われる、現代風の住居が建っていた。(ここにはここの生活の営みがある)受付のようなものもない。

やはり事前に電話をしなかったのだから仕方がないとあきらめかけた時に、上品な中年の女性が後ろから声をかけてきた。事情を説明すると拝観させてくれるという。
どうやら路地を歩いているときからよそ者の自分は顔に「仏谷寺を探しています」と書いていたのであろう。後でわかったことだが、この女性は最近この参道(路地です)で開店した、喫茶店を任されている人らしい。

早速じりじりと暑い外から、少し涼しい仏像が安置されているお堂(大日堂)に入れていただいた。木目が綺麗なお堂は平成元年ごろ建てられたそうである。(案内の女性もあまり詳しくないようであった)
出雲様式と呼ばれる仏様の特徴などをテープで流れる説明を聞きながら、日光、月光、虚空、聖観音菩薩を随えた薬師如来坐像を拝顔した。傷みもなく、素人目にも立派な仏様である。
 島根県のかなでも決して中央とはいえない土地であるが、ここは大陸から見ると玄関口であったのかもしれない。そして、建立寺は勢いがあったものが、いつも頃からかお寺を支えるパトロンの経済力が衰えたからか、さびれていったであろう。京都や奈良のテーマーパークのような寺院の門前とは明らかに異なる。

「暑かったでしょう。冷たいもの用意しておりますので後でお寄りください」と案内され行ってみると、案内した頂いた女性と二人のご高齢の女性が店の番をしていた。
決して商売に慣れているとは思えない素朴なこれらの女性から、美保関の由来、この辺はお寺が2件しかなく、住民はほぼどちらかの門徒であること、仏谷寺のご住職は兼業であることなどうかがった。
前回も述べたが、こういうコミュニケーションは博物館では絶対に出来ない。

 昔から観光化しているお寺の門前は土産物屋などがにぎやかしい。しかし、ここ佛谷寺は由緒は大変古いのだが、衰退後商業化されていなかったというか、少なくとも仏国寺を売り出そうという気持ちは周囲の人にはつい最近までなかったように思える。
ところが、この店のほかにも、全く周囲の路地とは不釣合いなまだ新しいお店が数件あった。
多分この辺の誰か埋もれてしまった仏谷寺を売り出そうとしているプロデューサーがいるのだろう。
ここ佛谷寺は最近までは地域に根ざしたお寺だったのだが、誰か裏でプロデュースしているヒトの気配を感じる、ただいま売り出し中のお寺である。

住人が今までお参りした数少ない寺社から神社仏閣はいくつかに分類できると思っている。
次回は神社仏閣の分類について私見を勝手に述べさせていただきたい。

新 全国寺社・仏像ガイド (美術ガイド) (単行本)
  注)住人は全国寺社・仏像ガイド 2001年7月30日発行を参考にしている。


 

佛谷寺


タグ:見仏
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