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世界初「歯周組織再生医薬品」誕生!? [歯の話]

毎日新聞は先日、
 成人の8割がかかっているとも言われる歯周病は、悪化すると歯を支える骨「歯槽骨」が壊され、歯が抜けてしまう恐れもある。対策は口の中をケアし、悪化を防ぐしかないと思われてきたが、昨年12月、歯槽骨を増やす効果のある新薬「リグロス」(一般名トラフェルミン)が発売された。現時点では効果は限定的だが、患者にとっては選択肢が広がりそうだ。【野田武】
と報じた。

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 今までも歯周組織を再生する方法として、GTR法エムドゲインなど、歯周病にかかった歯周組織の再生療法は歯周病専門医などの一部の歯科医で行われてきた。
それぞれを、住人が紹介するまでもなく、ネットでは様々な情報がすでにあふれている。
 リグロス[レジスタードトレードマーク]は遺伝子組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とする医薬品で、
一般医科で、トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)として褥瘡(じょくそう;床ずれ)の治療薬として広く使用されてきたものである。
したがって、安全性などの治験は省きコストをかけずに、歯科分野へ販路を拡大したい、と科研製薬としては思っているのではないか、と住人などは穿た見方をしてしまう。
製薬会社としてはhttp://www.kaken.co.jp/nr/release/nr20160928.html で、
 

科研製薬株式会社(本社:東京都文京区、社長:大沼 哲夫、以下「科研製薬」)は、歯周組織再生剤「リグロス[レジスタードトレードマーク]歯科用液キット600μg/1200μg」[一般名:トラフェルミン(遺伝子組換え)、以下「リグロス[レジスタードトレードマーク]」]について、本日、「歯周炎による歯槽骨の欠損」の効能・効果で製造販売承認を取得しましたのでお知らせいたします。
 「リグロス[レジスタードトレードマーク]」は組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)※1を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品です。
 歯周炎は主に歯と歯ぐきの間に付着したプラークや歯石によって生じる慢性炎症疾患で、炎症の進行とともに歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が徐々に破壊され、これを放置すると最終的には抜歯に至ることがあります。進行した歯周炎では、歯周組織の破壊を阻止するために「フラップ手術※2」と呼ばれる外科手術が実施されることがあります。
 科研製薬では、約1,000名のフラップ手術を施行する歯周炎患者を対象とした複数の臨床試験を日本国内で実施しました。その結果、手術時に「リグロス[レジスタードトレードマーク]」を歯槽骨欠損部に塗布することで、歯槽骨の増加など歯周組織再生に対する有効性・安全性が確認され、2015年10月に製造販売承認申請を行っておりました。
と言っている。

住人のつたない知識によると、
組織を再生するためのティッシュエンジニアリングには、組織を再生させる「細胞」とその細胞を維持して形を付与するための「足場」、そして細胞にいろいろなシグナルを送って活性化させる「生理活性物質(調節因子)」が必要で、その環境がある程度の期間維持されることで再生が成功する。下図参照。
そのなかで、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)は生理活性物質の一つである。
皮膚のようなシンプルな構造の場合、細胞成長因子は皮膚の線維芽細胞に作用するで、話はシンプルである。スプレーすればよい。
 ところがbFGFは様々な細胞に対し、さまざまな役割を果たしていることが判っている。
歯周組織は「歯根膜」、「歯槽骨」、「歯肉」という異なる組織の複合体である。
それぞれの細胞にbFGFは作用するので、望まない細胞ばかりが増殖してしまう可能性も否定できない。たとえば、歯根膜の細胞よりも歯肉の細胞が先に多く再生してしまうと、うまくいかない可能性が高い。
歯ぐきの手術をした時に、bFGFを塗って、歯根膜と歯槽骨がたくさん再生してくれればよいのだが、その辺はまだ、明確になっていないようである。

 今から臨床の現場で様々な試みがなされるであろうが、現時点での住人の考えは、歯周外科手術だけを行なうよりも、歯周組織の再生の可能性があるなら、やってみる価値はあると思う。
 また、このお薬に関しては、医療費の削減に躍起になっているあの厚生労働省が、保険適応を唐突に認めている。どんな、政治的なことがあるのか、住人のような市井の歯科医の知るところではないが、歯周組織の再生のために多少費用をかけてよいとお考えの患者さんには福音ではなかろうか。

最後に申し添えておきたいことは、
この薬を塗る前に、十分歯石を取ったりとか時間をかけた基本的な治療が必須であり、この薬だけを塗っても、日々の患者さん自身の口腔ケアに問題があればすぐに再発してしまうことは、言うまでもない。
また、メインテナンスが重要であることは、このブログをお読みになっていただいている方はご理解いただいていることと思います。

魔法の薬ではないことは確かである。

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Quintessence Vol20 No.1 2001-2.png上田実 再生医学とティッシュエンジニアリング 歯科治療における可能性  Quintessence Vol20 No.1/2001より引用

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