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街の思い出2(小倉) [エッセイ]

 今では車のフロントグリルにしめ縄を飾る車もめっきり減ったが、住人が子供の頃は町内会で、国旗を共同購入して、国民の祝日には各家の玄関に国旗を掲揚さえしていた。深い議論は別にして時代の変化は年々早まっている。

  昭和40年(1965)はベンチャーズの2回目の来日でエレキブームが起こり、総理府の調査で、「今の世の中は義理人情を重んじないのでよくない32%(昭和30年、41%)、よくないとは思わない56%(昭和30年、45%)である」という世情。
一方、都はるみが「涙の連絡船」を第16回紅白歌合戦に初出演、熱唱していた頃である。時代は 戦後の爪あともほぼ薄れ、みんな「明日は今日より豊かで明るい」と希望を持って疾走していたように思うが、地方都市の小倉は首都圏と比べて遅れをとっていたかもしれない。

小さい時の記憶と、その後の記憶が入り混じって錯誤していると思うが、今から40数年以上前の話である。間違っていたらご指摘下さい。

 住人は生まれたときに額の真ん中に赤いあざがあった。
結構目立ったらしく、祖母など「カエルの腹でこすると治る」と言い、こすられたのだがあまり変わらなかったらしい。気に病んだ母は どこから聞きつけてきたか不明だが、住人にラジウムを照射してもらいにしばらく小倉へ通っていた。
その病院(小倉記念病院)は現在別の場所に移転しており、今年(2010年)は小倉駅北口に移転予定だそうだが、当時は 現在の小倉井筒屋の新館、昔の駐車場のあたりにあった。当時の記憶はあまり残っていないが、何か薄暗いところだったと記憶している。

2496845龍蔵寺

  物心ついた頃、ちょっとお洒落してお出かけは小倉であった。おそらく北九州地域に住まわれていた方はそうだったのではないだろうか(黒崎周囲はわかりませんが)
路面電車に揺られて魚町の電停で降りるとそこは日ごろ見慣れないほど多くの人が湧いていた。

  冠婚葬祭などで、ちゃんと包装した贈り物を贈るといえば小倉井筒屋か玉屋(現在のリバーウオーク北九州のあたり)だった。
井筒屋に連れて行ってくれると聞くと、うきうきしたものである。

 住人の目的は屋上の遊園地と、おもちゃ売り場、大食堂であった。
買い物が済んで、屋上の乗り物に一通り乗せてもらい、大食堂で食事というのが当時の楽しみであった。
大食堂は食券を買って、見晴らしのよい窓ぎわのテーブルにつくと、真ん中に大きな急須と湯飲み茶碗がおいてあり、自分でついで飲む。
しばらく待つと、きれいなお姉さんがお子様ランチを運んで来てくれる。
オムライスにつまようじで刺さっている国旗を持って帰るのが楽しみであり、やや長じてからは(何某?)ランチという、ライスが平らな皿で、メインの皿とは別に出てくるやや豪華なランチが、住人にナイフとフォークの使い方を教えてくれた。

1951年に日本初のアーケード(屋根つき商店街)として開業した、魚町銀店街は今はやや陰りが見えるものの、住人の子供の頃までは活気があった。
母親が和裁、洋裁の趣味があったので、反物を見に米七や布地を見に百万両への買い物によく付き合わされたものである。(ちなみに幼少の頃の自分の洋服は大抵自家製であり、既製服を着ている友人が大変羨ましかった。)
 当時の旦過市場に面したどぶ川には 川の中に木の杭が埋められ、河川上にせりだす形で木造の小屋が建てられており、そのどぶ川はとんでもない異臭を放っていた。
紫川 に貸しボートがあったが、悪臭の記憶しかない。(ちなみに現在の北九州市庁舎があるあたりにはジェットコースターがあった。)

 この頃まで、銀天街の入り口などには軍服を着た片足のない老人がアコーディオンを弾いていたり、我が家周囲の道路わきなどでも、失対(失対事業)の高齢の女性が草取りをしていたり、戦後の暗い部分も住人の目にもかすかにとどまっていた。

加山雄三は「君といつまでも」を歌っていたが、北九州はまだそこまで乾いていなかったような気がする。
しかしながら、おおむね希望を持って、住人が迷子になるくらい大勢の人がうごめいていたような銀天街であった。

やや長じてからは買い物帰りに「揚子江のブタまん」を買ってもらって帰るのが楽しみであった。(今でもお勧めである。)
やはり住人の小さい頃の思い出は「食い物」に行き着く。

参考HP
(おまけ)北九州市の百貨店史

参考文献
昭和・平成家庭史年表 河出書房新社
目で見る北九州の100年 郷土出版社 
古写真集 関門浪漫 戎光祥出版
  

平成24年4月追記

kokuraginntenngaimonogatari (Small).jpg


小倉 魚町銀天街物語 アーケード誕生60周年 記念誌 平成24年3月20日 発行
つじり茶屋に「抹茶入り玄米茶」を買いに行ったときに分けて頂きました。


http://www.uomachi.or.jp/

 


タグ:小倉 思い出
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