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お勧めの一冊No.11 [お勧めの1冊]

日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点 (単行本)
山岸 俊男 (著)

• 単行本: 261ページ
• 出版社: 集英社インターナショナル (2008/02)
• ISBN-10: 4797671726
• ISBN-13: 978-4797671728
• 発売日: 2008/02
• 商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2.8 cm

出版社/著者からの内容紹介
偽装国家ニッポン!?
いつからこの国は「嘘つき」だらけになってしまったのか?
その驚くべき真相を最新の心理学が鋭く解き明かす!
●構造改革が「安心社会」を崩壊させた
●日本人とは「人を見たら泥棒と思え」と考える人々だった
●「渡る世間に鬼はない」と楽天的に考えるアメリカ人たち
●実は日本人は集団行動よりも一匹狼のほうがずっと好き
●「心の教育」をやればやるほど、利己主義者の天国ができる
●いじめを深刻化させる本当の原因は「傍観者」にあり
●なぜ日本の若者たちは空気を読みたがるのか
●どうして日本の企業は消費者に嘘をついてしまうのか
●武士道精神こそが信頼関係を破壊する
                   ~本書の内容から~

日本の「安心」はなぜ、消えたのか

この本を読んで、ある温泉旅館の女将が「一番お下品でやりにくいのは教職関係や公安関係などのお堅い職業の団体さん」といっていたような気がしたのを思い出した。(これらの方を誹謗中傷する気はありません)
周囲の目を気にして空気を読みながら秩序の安定を図ることを優先させ、仲間内では人物として評価されていても、その人たちが心底から清貧で、理性的とは限らないのである。
彼らにしてみれば同じ人間なのにそのような人間像を求められることは迷惑な話であろう。
これは何も特定の職種の日本人限ったことでなく、「旅の恥は掻き捨て」的利己主義(仲間内以外の不利益は知ったことではない)は昔から日本人は持っていると思われる。

アメリカ人と日本人とどちらかといえばアメリカ人の方がヒトを信頼するそうである。
これを読むまでは、住人も武士道の精神の退廃が日本をここまで混迷、脆弱化させたと少なからず考えていた、どうやら考えを修正しないといけないようである。

昔は村の共同作業もうまく行ったし、家に鍵をかける必要もなかった。それは昔のヒトの品格もあるかもしれないが、共同作業に参画しなかったり、反社会的行動は村八分になり、かなりの不利益をこうむったからである。一方現代は というと、地域のコミュニティの構成員同士の協力関係にしても、総論には賛成であるが、なかなか盛り上がらない。いざ自分にPTAや町内の役員などの協力要請があると、とたんに消極的、非協力的である。そして、一度は協力した者も、あまりに周囲が非協力的であることがわかり、2度目はない。その人の苦労を見た周囲の者はますます協力しなくなる。もちろん現在は村八分はない。

安心社会であった封建時代は武士道でよかったのであるが、「バック ツー ザ エド」では問題は解決しないことが明らかになった。
紫綬褒章を受章している著名な社会心理学者が書いた文章であるから構成、内容は理論的で濃いが、平易な文章で一気に読める。

「安心社会から信頼社会への移行(言葉の定義は実際に読んで理解してください)を待ちきれずに崩壊してしまうのではないか。という危機感から本書を執筆した」と著者は書いている。
科学的、理論的(感情的でなく)思考を努める筆者だが、現在の日本の状況には悲観的である。

「いじめの生じるクラスとそうでないクラスの違いの説明」は日本人集団の行動をよく説明しており、「繁盛する店とそうでない店」にも当てはまるのではないだろうか。郵政解散の自民党の圧勝も日本が先の大戦に突っ込んで行ったのも説明できそうである。

「KY」という言葉がはやったが、空気を読むのに躍起となる現代の若者だが、これは時代に逆行しており、これからの若者に必要な能力はむしろ「相手が信頼に足るかどうかを読むこと」だそうである。そしてアメリカ人より日本人は「他人を信頼する」ことも、「信頼できるかどうかを見抜く」点でも劣っているようである。
疑心暗鬼な社会より信頼社会の方がよりお互いの利益になり繁栄することを説明している。

武士道や品格といった精神論では問題解決しないと筆者は説く、そして科学的実験結果に基づく、日本人像が示されている。

 住人が以前からこのブログで書いてきたように、医療の現場はお互いの信頼関係があってこそ お互いに利益を享受できるのである。現代日本は「偽装より正直。他人を信頼する方が自分にとっても得策である」ことを多くの日本人が理解するシステム作りが急務であると理解した。信頼できるもの同士のネットワークの構築が日本人の40%を超えると、日本人の特性からして雪雪崩式に信頼社会が実現するであろう。
住人が山奥で考えている、「世間とは、日本人とは」ということにかなりの回答をいただいた。

住人の理解力と説明力には多少問題がるので、ぜひご一読いただきたいお勧めの1冊である。


タグ:日本人
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