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世の中のからくりについて考える2~「発掘!あるある大事典」も不二家もみんな同じ?」~ [世の中のからくり]

今日も重たい話題です。ぜひ皆さんにもちょっと止まって考えてみていただきたいのですが、重たい話の嫌いな方はパスしてください。前回「発掘あるある」の事件や「不二家」の事件、「構造計算書偽造」の事件はその根底の原因は同じようにに思えます。と述べました。今日はそこをさらに考えてみたいとおもいます。

 都井岬


 いずれの事件も登場するのは企業(マスコミを含む)と消費者そして行政です。行政に関しては、今回は省略します。
上記の企業が消費者をだましたことは絶対悪いです。議論の余地はありません。しかし極論ですが、もし企業に価格競争がなくて、十分なコストを価格に転嫁してよければ(商品が高くてよければ)、不二家の事件や構造計算書偽造の事件は起こらなかったかもしれません。

 リッツカールトンという高級ホテルグループがあります。最高のおもてなしを行うことで有名なホテルで、皆さんよく存知だと思います。きっと皆さんもそのサービスのレベルの高さには驚かされることでしょう。しかし、このホテルは何も収益を無視してボランティア活動をしているわけでなく、当然利益を目標とした企業です。他のホテルとの価格競争はせずに、彼らが理想と考えているサービス(商品)の提供を行っているのですが、人件費などそのコストはかなりなものですから、その料金は当然高額になり、住人のような貧乏人はお呼びではありません。この様な価格競争をしなくてよい企業はむしろ例外的で、多くの企業はたとえソニーやトヨタでも大なり小なり価格競争に巻き込まれています。

 話はまったく変わりますが、「歯周病になすび入りの歯磨き粉・・・」といった類のうたい文句の商品をがよくあります。歯周病の研究者からすればどこからそんな根拠が出てくるのか皆目検討が付かないようなものさえ、真剣に悩んでおられる方の琴線には触れるのでしょう。
 薬事法では根拠なく「治る」といってはいけませんが、企業は表現においてもすれすれのところを狙ってきます。これがまた消費者(患者さん)にとっても耳に心地よいものですから、ついつい買ってしまいます。歯医者さんでショッキングなことを告知された方にこのような商品を購入してしまう方が多いようです。
 念を押しておきますが、歯科においてそんな魔法の薬は存在しません。あればまず、医療関係者が皆さんに紹介します。電動歯ブラシの議論はここでは避けますが、お口の健康グッツを売っている大手企業ですら、本当はこのようなデザインの歯ブラシが良いとか、歯磨き粉の正しい使い方はこのようにするとわかっていても、商品が売れることを優先します。味の素がその容器の穴を大きくして消費量を増やしたように、歯磨きペーストはダイナミックにたっぷりと歯ブラシにつけたほうが商品は売れるのです。

 住人も含めて、消費者は総論では「みんなルールを守って、自然環境にやさしく、みんなが豊かで、平和になってほしい。」と考えています。しかし、いざ自分の周りのこととなると、「安価で、最高の商品やサービスを得て、自分が豊かな生活をしたい。安い、速い、気持ちよいなど感性での快適さを望み、理性的に都合の悪いことや自分の見えない遠くで起こっていることには目を瞑りたい。」とも考えています。
 そのような消費者を相手にしている企業の建前は「企業の目的は地球や全人類にとって良い商品やサービスを提供することで、消費者や社会に貢献し、従業員も含めて社会に利益を還元することである。」ですが、本音は「企業の目的はコストをできるだけ抑え、消費者の感性のニーズにできるだけこたえ、企業としてできるだけ多くの利益を生むことが優先課題で、そのためには多少規範を踏み外してもやむをえない。」と考えているように住人には思えます。
 不二家は安い商品価格で利益を上げるためには多少消費期限の切れたものを使用しても・・・・
 関西テレビ放送は安い製作コストで、視聴率を稼げて、広告収入が得られるのであれば、たとえうそが入っても視聴者が喜べば表現の自由だし・・・
 偽装問題では顧客は安いマンションやホテルを望んでいるし徹底的なコスト削減のためには、多少違法でも建築コストを抑えないと・・・
住人に言わせれば、事なかれ主義で、あらゆる点でお上のルールどおりにやってきた公営企業の「国鉄」から、ルールどおりにやれば利益捻出が難しいにもかかわらず、急速に利益至上主義に方針転換させられた「JR」は 確かに赤字は減りましたが、どの程度の変革やコスト削減しても安全運行できるかあやふやなままであり、福知山線の事故は起こるべくしておきた事故と言えます。
長距離トラックや、バスの事故にも同じことが言えます。

  ところで、最近医療機関で「患者様」と呼ぶところが増えています。本心が吐露した言葉が「患者様」で、実際にホスピタリティ(訪問者を丁重にもてなすこと。またはその精神)や無報酬のボランティア精神のある医療機関であるなら住人もすばらしいことだと思います。しかしたとえ深々と頭を下げて、慇懃(いんぎん)な態度でも、企業がお客様を集める論理(収益を上げるための論理)が根底にあり、内容が伴っていなければ問題です。皆さんは「患者様」という言葉をどう受け止めておられますか。うれしいのであれば問題ありません。しかし、賢明な消費者の皆さんはもう、うすうす気づいているのではないでしょうか。経営コンサルタントなどは企業と同じ論理で医療をとらえていますが、みなさんはそれをお望みですか。
 設備にしてもホテルと見まがうようなおしゃれな歯科医院での、高度なサービスやホスピタリティを皆さん望みます。だれも(患者さんはもちろんそこで働くスタッフも)ダサイ病院より、できればセンスのよいオフィスで仕事したいと考えています。一部のセレブを対象にしたような、高級ホテルの様なやり方でよければ(高額の料金をいただいてよければ)高度なサービスや設備を維持できます。
 保険診療に限れば全国統一価格ですので、価格競争はありません。しかし、低く抑えられた診療報酬で、ホテルのような診療室を作り、維持費を捻出するためにはその分のプラスアルファーの利益をかなり出さないといけません。価格が決められているなかで、余分な利益を出すためには、企業努力には限度があり、診療にかかるコスト(モノやサービス)を落とさないと無理なのは自明です。これでは何がホスピタリティなのかわからなくなってしまいます。

 たとえ話をしましょう。かつて、全国の国立病院や大学付属病院は私の知る限りほぼ赤字でした。国鉄同様の「親方日の丸」の体質に問題があったかもしれませんが、それだけではありません。お上は決して言いませんが、医療現場でスタッフの労働条件などを犠牲にせずに、医学的にきちっと治療を行おうとすれば今の制度では赤字になるのです。そこでお上は最近これらの医療機関は独立行政法人化して、責任は回避した上で、利益を上げることを求めています。しかしそれでも利益を上げるのは難しいと聞いています。その中でも、もっとも厄介者扱いされているのがじつは歯科です。現在公立病院などでは歯科は利益が出ないためどんどん切り捨てられています。切り捨てられなくても技工料などの大切なコストさえも低く抑えることが経営的に求められているのです。
 このような環境で、無償の奉仕の精神を持っている医療機関が、高級ホテルのような診療所を作ること自体困難であることがお分かりいただけると思います。そして、そのような設備を維持するためには 何か「からくり」がないと無理です。つまり高収益を前提にしている企業的な医療機関でないとそれだけの設備投資はできません。そしてそのコストは当然そのサービスを受けた消費者が払っているのです。
住人は医療が第2の「不二家」や「構造計算書偽造」にならないことを祈るばかりです。

 以上、高級ホテルの様な価格競争をしないで利潤追求する企業であれば別ですが、多くの企業は消費者に受け入れられるための価格競争をしながらコストを削減して利潤追求しています。その度を越してしまい表面化したのが関西テレビ放送であり、不二家です。このような無理な価格競争は必ず第二の構造計算書偽造や不二家を生むか、海外の安い労働力を利用したサービスになるかのどちらかです。今後この様な問題は医療や教育の現場で表面化するでしょう。近い将来、技工士は台湾の人あるいは義歯は中国製、歯科助手として横についてくれたヒトは片言の日本語をしゃべるフィリピン人でコミュニケーションがとれない。ということにならないとは言い切れません。いずれにしても現在の価格競争が日本人のためになるかどうかはなはだ疑問です。次回は企業に利益をもたらすための情報戦略について考えてみたいと思います。

>>>世の中のからくりについて考える1~「本物の時代」~

>>>世の中のからくりについて考える3~情報(広告)と企業の利益~
>>>世の中のからくりについて考える4~医療と真実の情報~



リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間 (単行本)
高野 登 (著)

都井岬



タグ:歯科 医療
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