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「患者さま」という呼び方 [歯の話]



  2003年の全国規模の患者調査において①医療施設での名前の好ましい呼ばれ方、②医療機関で「~さま」や「患者さま」と呼ばれることに対する印象、の2点を聞きました。

その結果、好ましい呼ばれ方としては、「~さん」が75%でもっとも多く、「患者さま」を好ましいと回答したのはわずか8%にとどまりました(図1)。また、「患者さま」という呼び方に対する印象は、「お客として大切にされている」24%、「患者の権利を大事にしてくれている」17%と肯定的に評価する一方で、「不自然な印象がする」32%、「医療にそぐわない」19%と否定的な評価もあらわれました。


この結果から、「患者さま」という呼び方は、一部の人には受け入れられているようですが、多くの患者に受け入れられているとはいいがたいのがわかります(図2)。


 では、なぜここ数年で「患者さま」という呼び方が急速に広まってきたのでしょうか。医療の商業化にともない、他の医療機関がそう呼んでいるからうちでも、というのが広まった要因ではないかと思われます。
先の調査結果では「医療機関は”患者さま”と呼ぶ前に患者に対する対応や態度を変えないといけない」と書き込んだ回答もありました。





~中略~
大事なのは、どう呼ぶかの以前に、患者やその家族とどんな信頼関係を築こうとしているか、どういった態度で患者と接するのかという考え方をかためなければなりません。その過程で呼び方がどうあるべきかということが出てくるのです。


 鳥取市内でホスピス機能を持った有床診療所を開設している徳永進医師は、「患者さまという呼び方は、患者の本当の悩みと向い合う気持ちがなくなったことをごまかす形骸化したものではないか」ときびしい警句をのべています。
~後略

文献
1)金田裕治(2004)「小春日和ー診療室の窓から」文芸社
2)「患者を「患者さま」と呼ぶよりも」「論座」2004年10月、No.23,PP8-21

実践!患者満足度アップ
前田 泉 (著)
日本評論社 (2005/06)
P44



 住人も徳永進医師の考えに大賛成であります。医療側がいうべきではありませんが、言葉だけの「患者さま」のなんと虚しいことか。けれども、患者さんと真正面から向き合い、すべてを受け止めるには、医師側の人間的器や経済力に余裕がないと、受け止める側が壊れてしまします。言うのはやすし、行うのは難しです。


近頃、病院では「患者さま」って言うんだってな。そのほうが癒しの雰囲気を持ついい環境だと思ってしてるんだろうけども、変だな。「患者さま」はやめたほうがいいんじゃないかと思うな。

「奉る排除」というのがあるでしょ。あれで絆の雰囲気が壊れるかもしれん。「さま」がつくときは、たいていは絆の雰囲気を薄めていることが多いんだと思う。

 どうしてかと言うと、不幸せなときに信ずるということは、「依存」と呼ばれるような心境を、「頼る」とか、「すがりつく」とかいうような心境を生み出すはずなんです。~中略~

 それで「さま」と言われたら、違うんじゃないかな。幼稚園で「お子さま方は」とか、「かずこさまは」とか言われても、五歳の子は大事にされているような気がせんじゃろうと思うな。「かずちゃん」と言っただけで、かわいいように思える。それに似たような効果が起こって、病院の「さま」というのはいいかどうか怪しいと思うな。

~中略~

 いずれにしても、「さま」と言うのは、大事にさている雰囲気が出るようにという工夫なんだろうけれども、やりかたがヘタクソで、熱意と努力があって、考えが浅はかで間違えてますね。

間違った治療法と同じだ。雰囲気作りをしようということなんでしょうけれど、雰囲気作りのなかで一番大事なものは言葉じゃなくて、態度なのよ。目つきとか、息遣いとか、そういうもの、それがいちばんきほんね。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P069



タグ:医療
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