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夢の再生療法 [歯の話]

 6月はむし歯予防デーがあるせいか、マスコミも歯について感心を持ってもらえる月です。先日も健康番組で、歯周病の治療の話題が出ておりました。>>>主治医が見つかる診療所 2008年6月16日
歯周病の治療として、歯周組織再生療法が紹介されておりましたが、今日はそのお話です。

 そもそも再生とは失われた組織が元どおりにすることです。
例えばトカゲは天敵に襲われるとシッポを木って逃げますが、そのシッポはしばらくするとまた生えてきますが完全に元通りになるわけではありません。これは再生ではありません。
一方イモリは指が切れた場合、骨、筋肉など組織構造が完全に元通りになるそうです。これを再生といいます。
>>>所さんの目がテン 第776回 2005年4月10日  http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/05/04/0410.html

さて、歯周病とは歯が植わっている周囲の組織(歯周組織) が破壊されて失う病気ですが、従来は(今でもおおよそ同じですが)破壊された歯周組織は元通りにすることは不可能で、それ以上歯周病が進行、悪化しないための手当てに主眼がおかれていました。
ところが、再生療法の進歩により歯科医学の分野でも歯周病などで失われた組織を再生させる治療法がいくつか開発されました。
エムドゲイン、GTR法などといわれているものです。
>>>歯周組織の再生療法

関門橋夜景のコピー (Small).jpg関門橋

 ここで、組織を再生させるために必要なものを簡単に説明します。
組織を再生させるためには当然再生する場所が必要になります。ビル建設で言うと土地ですね。
次に必要なのがその組織を作るために必要な細胞です。ビル建設で言うと機材を搬入したりビルを立てるヒトですね。
そしてヒトがビルを作るための足場、ヒトにさまざまな情報を提供する生理活性物質
最後に台風や地震が来ない穏やかな環境が必要になります。
つまり、理論的には再生の場、細胞、足場、生理活性物質、環境がそれぞれ整えば再生は可能なのです。
肝臓などの細胞の場合、閉ざされたお腹の中という再生にとって穏やかな内部環境で、しかも肝細胞はもともと増殖能が旺盛で、比較的シンプルな組織ですので、場(新しい肝臓が出来るためのスペース)さえ確保してあげれば比較的理論どおりにゆくと思われます。

 ところが、歯周組織は再生には全くむかない組織なのです。
1、再生の場が確保できない、環境が厳しい
2、複数の組織を秩序を持って再生させないといけない
 歯があるところは生体からすると外部環境(体の外)です。食物、唾液、細菌等が多く存在します。
再生療法の手術をした場所は手術をした瞬間から細菌などの異物が進入してきます。GTR用の膜を置いても、唾液や体液以外のもので満たされた瞬間からそこは外部環境になります。
手術が治るまで食べないわけにも行きませんので、咀嚼による物理的、機械的刺激、食物や細菌による刺激に患部はさらされます
つまり歯周組織の再生とは「台風で大荒れの波打ち際で、工事をする土地確保も難しいなか、さまざまな邪魔者が攻撃してくるなかでビルを建てる」ようなものです。
 しかも歯周組織というのは歯肉(歯ぐき)、歯槽骨、歯根膜といった複数の組織を歯が生えてきたように整然と再構築しなければいけません。

住人も歯周病の治療やインプラント治療と併用して、ずっと再生療法に取り組んでいますが、そんなに簡単にイモリの手みたいに再生してくるものではありません。
失ったものが取り戻せるというのは人間にとってこんなに喜ばしいことはありません。
現時点ではコストがかかり、完全ではありませんが、そのことをご理解いただけるのであれば、チャレンジしてみる価値のある夢の治療法だと思います。

歯科医向けお勧めの一冊
歯科臨床における再生療法 (補綴臨床別冊)

「歯科」本音の治療がわかる本新版
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